二〇〇二年一一月、厚生労働省は、「男女間の賃金格差問題に関する研究会報告書」を公表し、男女間賃金格差は、「長期的には縮小傾向にあるものの国際的にみると格差は大きい」として、その原因及び改善の課題を指摘した。これがその後の男女雇用機会均等法見直しを促すことになったのだが、ここで検討されているのも、女性のなかではいまや少数派になってしまった正規労働者の男女間賃金格差である。政府には、非正規雇用であることによる低賃金問題は、男女の性役割やそこから派生する差別としてとらえる視点はないようで、こうした姿勢は、「パート研報告」にも共通している。
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これに対して、ILOは、二〇〇三年第九一回総会の「条約勧告適用専門家委員会報告書」で、二〇〇〇年の調査をもとに、女性の賃金水準は男性の六五・五、学歴別でみると高卒では六〇・三、年齢別では五〇〜五四歳で五五・三であることを指摘したうえで、日本政府が採っている賃金基本構造統計調査は非正規労働者をカバーするものではないから、女性のなかに広がっているパートタイム労働者や有期雇用労働者を含めたときには、賃金格差はさらに大きく深刻である、と警告している。このようにILOは、労働力の流動化・多様化がすすむ女性労働の特質をとらえて男女間格差を是正する課題を探ろうとしている。それは、非正規雇用化とこれによる低賃金不安定雇用の広がりが女性労働を源とし、しかもその非正規雇用は、男女の性役割に規定されて、長時間労働に象徴される働き方の男性モデルに対して、仕事と生活の両立をはかる家計補助的労働としての性質を有し、それゆえに低賃金不安定雇用であることを適確にとらえたものといえる。